営業課

『割れ窓理論を応用した労働災害対策』5分間SSC活動の提唱

 我々、建築業界に於いてその作業に従事する者は、労働基準監督署の指導のもと、日々現場での安全意識の向上を図り、作業環境を整備して労働災害を防止し、作業効率を高めていく事が課題とされております。そんな中、近年においては労働災害の内容や性質も大きく様変わりし、行政が策定する安全基準の内容も大きく変化しております。昔であれば事故として扱われる事のなかった不休災害に含まれる些細な事故への対応等が必要とされますが、その要因の大半はヒューマンエラーであり、これはハード面での安全対策だけで防ぎ切れるものではありません。このヒューマンエラーをいかに無くしていくかが大きな課題となっております。
そこでその対策として「割れ窓理論」を応用した安全対策を提唱いたします。

割れ窓理論(英: Broken Windows Theory)とは、環境犯罪学上の理論で犯罪機会論ともいい、軽微な犯罪を徹底的に取り締まることで凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できるとする理論です。アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案者で、「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」との考え方をもとに築かれております。具体例として、1994年に検事出身のルドルフ・ジュリアーニ氏がニューヨークの市長となり、街の治安回復を図るべく当時は当たり前のように放置されていた地下鉄の落書きを、書かれても書かれても徹底的に消し続ける事によって次第に落書きが無くなり、それと同時に凶悪犯罪も減少したという成功例があります。犯罪者の心理として割れ窓や落書きが放置されている様な場所は感覚的に治安が行き届いていないと認識し、無意識のうちに犯罪も起こしやすくなるのです。
犯罪者になぜその様な犯行に及んだのか、どんな経緯でそのような犯行に及んだのかを確認し、その様な犯罪者を今後生まなくさせるためにはどういった教育を進めるべきなのか。従来からある犯罪者を改善させる・また犯罪者にならないような教育を進める考え方(犯罪原因論ではなく、犯罪者を遠ざける、犯罪者からその機会を奪うという理論です。


では、この犯罪機会論をどの様に我々の建築現場に応用すればいいでしょうか。


建築現場には新築現場から改修現場、大小様々な現場があります。また労働災害にも様々なものがあり、災害要因も一概にこれと云い切れるものではありませんが、その中でどういった現場に労働災害が起きやすい傾向があるのでしょうか。それは、元請け側や連業者の管理が行き届いていない、目の届きにくい現場、資材・道具などが乱雑になっているような整理整頓が出来ていない現場、大きくはその様な現場に偏っているのではないでしょうか。そこで私は昼休憩後の5分間SSC活動を提唱いたします。SSは整理・整頓、Cは点検(英:check)の意味で、昼の休憩時間後の5分間に場内の資材や道具等の整理を行います。また場内を巡回し、施設の不備や危険個所がないかの点検を行うのです。資材・道具が不規則に配置されていればそれを整えます。表示物が斜めになっていれば真っ直ぐに直します。場内が散らかっていたら片付け・清掃を行います。自分の担当エリア以外に目を向けて広い視野で現場を見渡します。施設等に不備があれば、報告を挙げ、改善の仕様がなくても危険な場所だなと認識する事が出来ます。一見災害防止には関係のない活動だと思われますが、整理整頓が出来ている現場は災害が起こりにくいものです。もちろん、管理の面では工事の規模、また整理整頓の面では工期の問題等でそうならざるを得ない状況は多々あると思われますが、それを理由に出来る事すら御座なりにしてしまってはいないでしょうか?作業員に対して日々安全に気を配る様指導しても、どうしても慢性化してしまうのが現状であると思います。朝礼時行われるKY活動はあくまで「危険予知」であり、その日の作業内容の中で予測の出来る危険に対しての対応なので新たに危険個所を発見する事は出来ません。予期できぬ現場の危険を認識するための活動にもなります。そしてこの活動を行ううえで何よりも大事なのは、作業員一人一人がただ単に整理整頓・チェック作業をするのではなく、この時間は慢性化する作業から離れ、気を引き締め直すために行なっているという事を理解し、行動する事です。毎日活動する事で作業員の「気づく力」を養い、現場から災害要因を遠ざける、災害が起こりうる機会を奪うのです。一日の作業の中でもっとも気の緩みやすい昼休み後に行い、襟を正して午後の作業に臨む事でその効果も発揮しやすいのではないかと考えます。当社では作業員全員の賛同を得て既にこの取組を始めております。具体的な効果は目になかなか目に見えて来るものではありませんが、この活動が建築業界に広く浸透し、労働災害の減少のきっかけになる事を切に願う次第でございます。




富士商会株式会社  代表取締役 真野 太